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サッカー本大賞2018の受賞作発表!

3/12(月)に行われた「サッカー本大賞2018」授賞式は、「PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法」(岩政大樹著、KKベストセラーズ刊)が「サッカー本大賞」を受賞、「マヌエル・ノイアー伝記」ディートリッヒ・シュルツェ=マルメリンク著、吉田奈保子、山内めぐみ訳が「翻訳サッカー本大賞」を受賞した。WEBサイトで投票を行った「読者賞」は「PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法」(岩政大樹著、KKベストセラーズ刊)が最多票を獲得し、ダブル受賞となった。

 


選考委員による選評

 

<サッカー本大賞>

■ PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法

(岩政大樹 著 KKベストセラーズ 刊)

 

設計のちゃんとした本で、ポリフォニック(多声的)な脚注の工夫にも一日の長がありました。最大の魅力は、事件現場でもあるピッチレベルからのサッカー用語に対する再定義がなされたこと。そしてそれは、マンネリ化したサッカーをめぐる言説空間を穿つものでもありました。構成者の介在することが多い選手、監督関連書籍が多い中で、著者の自律的な執筆姿勢にも注目が集まりました。(佐山)

 

ライターを立てず岩政さんご本人が書かれているからか、経験が生の言葉になって本に定着していると感じます。プレーする人間に対するコーチングの書であり、既存のサッカー観を揺さぶる示唆に富んだ内容と言えます。例えば、「自分たちのサッカー」「崩された失点」といった、何気なく使っているものの、厳格に定義されていない言葉を一つひとつ抽出して捉え直し、冷静にピッチレベルでできることに落とし込もうとしています。そして注釈や関連ワードで補足する丁寧さがいいですね。サッカー好き、鹿島ファンのみならず、多くの方に読み物として楽しんでもらえる一冊だと思います。(幅)

 

選手自身が書いていることが良くわかる内容でした。選手の自伝や聞き取り取材にあるような苦労話や自慢話でストーリーを作った感がなく、自分の経験を彼なりに冷静に、客観的にまとめ、あとに続くサッカー選手に何を残したいか、という著者の思いが伝わってきました。日本代表にもなった一流選手だからこそわかったこと、またJ1鹿島で主力選手としていくつもタイトルを獲得した後で、J2や地域リーグでも活躍している様子がうかがえて興味深く読めました。(実川)

 

<翻訳サッカー本大賞>

■マヌエル・ノイアー伝記

(ディートリッヒ・シェルツェ=マルメリンク 著/吉田奈保子、山内めぐみ 訳 実業之日本社 刊)

 

機略に富む著者、マルメリンクは、ドイツの革命的GKマヌエル・ノイアーに会わずに書く方法を選択しています。苦肉の策であった可能性もありますが、引用と評説を多用することで、奥深さを生み出すことに成功しています。ノイアーの心の故郷でもあるシャルケからバイエルンへの移籍がもたらしたサポーターとの軋轢は、自ずと地域クラブ論となり、創成期のサッカーではDFがGKをやっていたとする洞察も第2リベロといわれるノイアーのプレー哲学を擁護するものでした。前回W杯で、ハリルホジッチ率いるアルジェリアとドイツが相見えたあの伝説的な決勝トーナメント1回戦に関する記述が多いのも、日本のコア・ファンには嬉しいところです。(佐山)

タイトルはノイアーの伝記となっていますが、実際はドイツのGKの系譜とノイアーという人物のストーリーの両輪仕立てになっています。原著はもしかしたら、どちらかの内容に力点を置いていたのかもしれません。個人的には、ノイアーの人柄を感じさせる禁断の移籍の裏側、そしてドイツGKの再突端になぜ彼がいるのかよく分かりました。話題性、時代性において、なぜ今ノイアー?という疑問はありますが、今年のワールドカップでひょっとして連覇(厳しいとは思いますが)するかもしれません。よい意味で予言の書になればいいなと思っています。(幅)

 

 GK系譜の本を翻訳したことがある私のイチオシでした。ノイアー自身の経歴だけでなく、なぜドイツが優秀なGKを輩出できるのかという背景に触れられているところはとても興味深い。ノイアーだけでなく、彼以前にドイツGKの系譜に連なるゼップ・マイヤーやオリバー・カーン、また彼らを育てたGKコーチについても触れられていること、そしてノイアーのようなキーパーが出てきたことで、ドイツのGKスタイルが変わり、それが世界標準になっていったことがわかる本でした。(実川)

◎ 選考委員長・佐山氏からの本年度の全般的講評

 

 5回目となる本年度は、対象となる和書が、56冊。翻訳書は18冊でした。冊数の多寡で言うと、和書に関してはワールドカップイヤーだった2014年の103冊から半減しています。翻訳書は2015年が最も少なく13冊でしたが、いつも20冊前後という点では、あまり変化が見られません。

ただ和書に関しては、漸減傾向で、母数の減少が気がかりです。このままのペースでは、数年後には零冊になってしまいます。もちろん、統計数字上のマジックですが、受賞作なしならいざ知らず、対象作なしではやはり困ります。少子化問題以上に気がかりな現実なきにしもあらずです。

 今年も、優秀作品には優劣つけがたいものがありました。選考基準は、新、高(クォリティ)、大(大衆性)の三要素に本づくり(装丁)の要素を加えています。なお、同列に並んだ場合は、より若くフレッシュな著者や受賞歴などの無い方を後方支援の意味で選ばせて頂いております。 

 余談になりますが、サッカー本ほど、校閲作業に専門性を求められるジャンルはありません。そのせいか、校正ミスの多い初版本が目立つのもまた事実。あくまでも自戒と反省を込めての話ですが、この点もまた今後気にして頂ければと思います。

 

 

 

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